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キュレーションサイトの光と闇
welqの医療に関する偽デタラメな記事が検索上位を独占していた問題がきっかけとなり、キュレーションサイトに向けられる目は年々厳しくなっています。本来のキュレーションサイトとはネット上にある記事をまとめあげることで、調べる人の利便性を上げることが目的とされていました。
キュレーションサイトが無かった頃は、個人のブログや公式ホームページが検索上位の大半を占めていましたが、現在ではNaverまとめ、トリップアドバイザー、RETRIPに代表されるキュレーションサイトが上位を独占しています。
本来の目的を見失ったRETRIPとキュレーションメディア
もう一度繰り返しますが、キュレーションサイトの本来の目的は、情報の質を保ったまま、まとめ記事を作ることで新たな価値を創造することです。キュレーションサイトの利点としては
- 複数のサイトを利用しなくて済むという利便性の向上
- 個人のブログではできなかった観光地同士の比較やランキング
- 素人が気軽に投稿できるプラットフォームの作成
の3つが大きいと思います。日本を代表するキュレーションメディア、RETRIPは「あなたを旅に連れて行く」をコンセプトとし、誰もが情報を発信して、旅行の体験と文化をたくさんの人に広げることが理念だとホームページには書かれています。
しかし今は当初の理念はすっかり失われ、ただのパクリ記事と嘘の記事でPVを稼ぐ、ひどいサイトに成り下がっています。キュレーションサイトは他にもたくさんありますが、総合的に判断するとRETRIPほどひどいサイトは無いでしょう。
RETRIPがおかした7つの大罪
1 行ったことがない人が書いている
RETRIPは本来、旅行の体験をより多くの人に知ってもらうためのサイトです。しかし多くの記事はその場所に行ったことのない人によって書かれています。そのため嘘や憶測によるデタラメ記事が横行しているのです。
2 危険な場所を紹介している
例え行ったことがなくても、それが良い場所ならまだいいのですが、時には命の危険さえある場所を紹介していることもあります。治安が悪く地元民もあまり行かないようなビーチ、米軍基地にあるビーチをおすすめとして紹介する嘘記事がまかり通っています。
3 無理な旅行スケジュールを組んでいる
RETRIPは親切にも旅行のスケジュールまで考えたうえで、おすすめのプランを提案していることもあります。大抵は問題ないのですが、ときには物理的に不可能なスケジュールを提示することもあります。これは都会のライターが田舎の電車の事情を知らないまま、勝手な思い込みで書いていることが原因と考えられます。
4 写真の出典を明記しない
RETRIPがこれほど広まった理由の一つが、通常の2倍くらいはあろうかという巨大な写真です。観光地を紹介するとはいっても、文字情報より画像情報の割合が高いサイトです。
ここはよく勘違いされやすいことですが、出典を明記したうえで他のサイトの画像のアドレスを使用し、画像を使うのは著作権上問題はありません。それはあくまで”リンク”という扱いになるためです。
しかしRETRIPは写真を引用したことも示さずあたかも自分が撮ったように見せかける例がしばしばあり、法律上問題があります。
5 ランキングの順番が結構いい加減
RERRIPといえば「○○のおすすめ観光地ランキング」というまとめ記事が鉄板ネタです。ここで自分の地元の記事を読んでいると、おや?と思うことがあります。明らかにつまらなくて有名でもないような観光地がかなりの上位にランクインしているのです。
これはおそらくパクリ記事対策だと思われます。他の記事のランキングをそのまま使用するとパクリ記事だと思われてしまうため、上位3つくらいは変えず、それ以外は適当にシャッフルしているものと思われます。
6 キュレーターから搾取している
RETRIPの記事作成は簡単な審査はありますが、基本的にかなり開かれています。これの報酬がかなり安いのが問題点です。今は少し変わっていますが前は、1記事いくら、という固定性を採用していたため、質の低い嘘だらけの記事が量産されていたという歴史があります。
7 他のサイトに悪影響を与えている
RETRIPを閲覧しているのは旅行に興味のある層だけではありません。RETRIPが他のサイトの記事を参考にしてまとめあげたように、RETRIPもまた、他のサイトの参考にされているのです。今は新しいキュレーションサイトがどんどん出来ています。
一度ネットに書いた嘘やデタラメな記事が他の記事に参考にされ、本当のことのようにネットの世界に駆け巡ることはよくあることです。
RETRIPに比べればNAVERまとめのほうがまだまし
キュレーションサイトの話でよくやり玉にあがるのが、NAVERまとめですが旅行の記事だけを比べればNAVERの方が大分ましです。報酬はpvで決まるのでユーザビリティを高めようとする記事が多く、文字数や細かい情報や充実しています。出典は明記しているので著作権的に問題はありません。
どうせ他のサイトの文章を参考にしていることには変わりないので、丸ごと引用してくれた方が読む側としては嬉しいものです。
またNAVERは総合的なまとめサイトなので、わざわざ旅行の記事を書く人は旅行好きが多い傾向にあります。RETRIPは旅行が大して好きでないけどお小遣い稼ぎのためになんとなく応募してみました、というライターが多い印象です。
ブラック企業とRETRIPの共通点
RETRIPは一カ月で数千万pvを稼ぐこともあるので、当然著作権の侵害や写真の無断転用に関するクレームや炎上は頻繁におきます。そのようなトラブルが起きるたび、運営側は記事を何事もなかったように削除し、証拠を隠滅して難を逃れています。
私も以前記事の削除要請をしたところ、「弊サービスのキュレーターがご迷惑をおかけし、大変申し訳ありません」という返答が返ってきました。自分の会社(trippiece)の責任ではないと遠回しに言っているようにしか聞こえません。
とりあえず大量に記事を安く書かせて、ダメな記事は削除して、それ以外の記事で儲けられるうちに収益を得てしまうという発想です。ブラック企業が社員が辞めることを見越して、新卒を大量に安く雇って利益を上げようという発想と一緒です。
一人ひとりが抵抗したところでブラック企業が無くならないように、RETRIPの横暴を止めるには「読まない」「記事を書かない」では弱すぎます。検索順位を決めるアルゴリズムが大幅に変わらない限りは、この状態は変わることはないでしょう。
次回の記事では観光情報サイトの信憑性を判断するコツを書いていきたいと思います。