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血液型占いを気にする人はいまだに多い
日本人にとって最もなじみ深い占いといえば、血液型占いでしょう。ほかの占いと比べて分類が4種類と少なく単純なため、友達と気軽に盛り上がれるのが魅力です。
ある調査によると、日本人の約6割が、程度に差はあれど、血液型占いを信じているようです。
本当のことを言うと、血液型が性格に影響を及ぼすという科学的根拠は全くありません。赤血球が脳細胞と接することはないため、論理的に考えて、血液型占いはデタラメ、嘘です。
しかし、科学的にはどうだと言っても、それでもなんとなく血液型占いを信じてしまう人が多くいます。今回は血液型占いが正しく見えてしまうからくりをご紹介しましょう。
やっぱり大きいのがバーナム効果の影響
「バーナム効果」という言葉をご存知でしょうか。バーナム効果は誰にでもあてはまるような曖昧な性格診断を、自分にだけ当てはまる正確なものだととらえてしまう心理学の現象を指します。
これだけではわかりにくいので例を出しましょう。有名な実験に、「フォアの実験」というものがあります。1948年、アメリカの心理学者、バートラム・フォアは大学生たちに心理検査を行い、後日、その結果に基づいた性格診断という名目で、診断の書かれた紙を渡しました。
しかし、これは全くの嘘。診断結果は全員同じものを渡しました。一人ひとり性格は違うはずですが、5段階評価で当たっているかを学生たちに評価させたところ、なんと平均スコアが5点満点のところ4.26点でした。学生たちはその診断結果を正しいと思ってしまったのです。
では、その診断結果には一体なんと書かれてたのでしょうか。そこには誰にでもあてはまり、なおかつ前向きな内容が書かれていました。例えば
「あなたの夢にはやや非現実的な願望も含まれています」
「あなたはまだ使われていない才能を持っています」
「あなたは弱みを持っているときでも、普段はそれを克服できます」
など誰にでもあてはまるような内容です。それでも、学生からしてみれば、わざわざ心理テストもやったし、心理学の教授が言うことだし正しいだろうと信じてしまうわけです。これがバーナム効果の威力です。
同じように血液型占いの本に書かれていることは、誰にでもあてはまる曖昧なことが書かれており、権威に弱く信じやすい人ほど、バーナム効果にかかって信じてしまうのです。
バーナム効果だけでは説明しきれない要素
血液型占いへの反論には主に上記で述べたバーナム効果が使われます。
しかし、バーナム効果だけでは説明しきれない部分があるのも確かです。例えば血液型性格診断で、自分の血液型の診断結果と、異なる血液型の診断結果を比べた場合、多くの人は自分の血液型の診断のほうが自分に近いと感じるという実験があります。
ためしに、血液型性格診断の本を読んでみましたが、O型の自分はAB型の診断より、O型の診断のほうが明らかに当たっているように感じました。知人に協力してもらったところ、ほとんどの人が同じことを言いました。
もし、血液型占いが、バーナム効果だけを使って、誰にでもあてはまることをでたらめに並べているとしたら、そのようなことは起きないはずです。血液型占いはある程度の法則や根拠に基づいて作られていると推測できます。
予言の自己成就と確証バイアスの2つが鍵
血液型占いの中で有名なものとして、A型は几帳面、B型はマイペース、O型は大雑把、AB型は天才肌、のようなものがあります。もちろんこれには科学的根拠も因果関係も全くありません。
しかし、人には周りが期待すること、周りが信じていることに影響されやすい性質があります。例えばA型の人は、例え全く血液型占いを信じていなくても、「A型は几帳面であるのが普通」という風潮が存在すると、それに影響され、それだけで几帳面な行動をとる機会が増えます。
これを心理学では「予言の自己成就」と呼びます。
例えば、生徒は教師に期待されると、それだけで期待されない生徒よりも成績が伸びるという有名な実験があります。これはピぐマリオン効果と呼ばれ、予言の自己成就の一種です。
もし人が几帳面になったとしたら、他の行動にも影響を及ぼします。几帳面になると、神経質になってストレスがたまり、血中の糖分が不足して甘いものを好むようになります。
A型の人が血液型占いで「甘い物が好き」という言葉を見ると、当たっていると感じてしまいます。
もちろん、これはほんの一例です。甘い物が好きなのは誰にでもあてはまるようなことですが例えば「神経質なので、人の行動が気になり、マイルールを押し付ける傾向があるため、子供に嫌われやすい」という傾向はあるようです。
しかしこれだけでは、なぜ人々が血液型占いを信じるかを説明できません。予言の自己成就が性格に及ぼす影響はそれほど大きくありません。A型の人のうち、予言の自己成就によって、几帳面な性格に変わる人はせいぜい一割程度でしょう。
ここで注目したいのが「確証バイアス」です。確証バイアスとは、自分が信じていることを裏付ける証拠ばかりに目が行き、自分が信じることに反する証拠から目を背けてしまうという現象です。
例えば、日本人を神経質なグループと神経質でないグループにちょうど人数が半々に分けたとしましょう。本来A型も半々に分かれるはずですが、予言の自己成就によって55%と45%くらいに分かれます。
血液型占いを頭のどこかで信じている人はこのデータを見ると、「A型の人は神経質な人が多い」という情報ばかりに目が行ってしまい、神経質でないグループにいる45%から目を背けてしまうのです。
日本人全員の性格はわからなくても、自分のまわりにいる人の血液型と性格を比べると、どうしても確証バイアスは発生します。このような「やっぱり血液型占いは当たっている」という経験を繰り返すことで、思い込みは強くなり、科学的根拠がなかろうと、信じてしまうというカラクリなのです。
まとめると、バーナム効果、予言の自己成就、確証バイアスという三つの心理学的な効果によって血液型占いは日本中に広まってしまったわけです。