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人工知能がもたらした衝撃
人工知能の発達に関するニュースが、次々と報道されています。人工知能が囲碁やチェス、クイズの世界チャンピオンを破った。症状からマイナーな病名を言い当てた。小説を書いて星新一賞の一次審査と通過した。作曲、株式投資、天気予報、絵画、東大受験まで応用範囲を広げた・・・
つい10年前には想像もつかなかった事を人工知能は成し遂げています。近年の人工知能の研究ブームを考えれば10年後にどう進化するか予測もできません。
人工知能は単純労働者の夢を壊すか
それに乗じて「人工知能が人々の単純労働を奪う」という説がささやかれています。雇用や働き方に影響を与えるという点では賛成ですが、この説は嘘であると感じています(理由は後述)
オックスフォード大学のマイケル・オズボーン教授の研究によると、今後20年以内にアメリカの47%の職業が機械、人工知能に置き換えられると、予想されています。
どのような職業が無くなるかというのも具体的に明示されています。
機械が奪う職業ランキング(米国)の上位15位を抜粋。
- 小売店販売員
- 会計士
- 一番事務員
- セールスマン
- 一般秘書
- 飲食カウンター接客係
- 商店レジ打ち係や切符販売員
- 箱詰め積み降ろしなどの作業員
- 帳簿係などの金融取引記録保全員
- 大型トラック・ローリー車の運転手
- コールセンター案内係
- 乗用車・タクシー・バンの運転手
- 中央官庁職員など上級公務員
- 調理人(料理人の下で働く人)
- ビル管理人
引用:ダイヤモンドオンライン
会計士を除けば、いずれも特別なスキルがいらず、あまり高所得でない職業、もしくは単純労働といえます。日本の場合で計算すると、49%の職業が人工知能で置き換えられるいうデータも出ています。
反対に人工知能に置き換えられない職種としては
アートディレクター、インテリアデザイナー、クラッシック演奏家、ゲームクリエイター。作詞家・作曲家、シナリオライター、心理学研究者、内科医、そして経営コンサルタント
引用:るいネット
などが挙げられます。要するに音楽や芸術など、医者やカウンセラーなどのクリエイティブな仕事や人を相手にする仕事は生き残ると結論付けています。
単純労働は人工知能との勝負になるからダメだ。人間にしかできない高いスキルを身に着けろ、という意見が多数見受けられます。
人工知能の開発には需要側の事情を考慮せよ
オックスフォード大学の研究では、一つ一つの仕事が人口知能に代替可能かを検討し、技術的に代替可能であれば、無くなる、結論付けています。
しかし、それでは大事な視点が抜け落ちています。オズボーン氏の考え方は人工知能の供給側だけしか考えておらず、需要の側が無視されています。
どの業界であってもそうですが、技術的に可能であっても、需要がなく、採算が合わないなら継続的に生産されることはありません。
高度な技術を駆使したコンコルドが採算があわずに撤退したのがいい例です。いくら高速で美しい飛行機であろうとも、採算が合わず、採算が合うように料金を設定すると客が来ないのでは、無用の長物です。
人工知能を供給する側もビジネスです。開発に金がかかる分、確実に需要が見込める分野、もしくは開発するように圧力をかけられている分野からの要請を優先するでしょう。
大事なのは「技術的に作れるか」ではなくて「採算が合うか、需要が見込めるか」なのです。
人工知能で真っ先に仕事が取られるのは高給取りの知的労働者
単純労働が人工知能に置き換わるのは遠い将来の話だと考えます。なぜなら大金を積んでわざわざリスクのある人工知能を導入するメリットがあまりないからです。
一部では導入されていても、それは話題性を狙ったものであったり、遠い将来を見据えたものだったりします。
安い労働者の代わりに、高額な人工知能付きロボットを導入するのは採算が合いません。
それよりも、
- 人工知能でもそこそこのクオリティのものが作れるの職業
- パワポとエクセルしか使えないホワイトカラー
の方がよっぽど危険です。
人工知能に代わっても採算が合う仕事の例
例えばwebデザイナー。一見クリエイティブな職業ですが、人工知能でもかなりのレベルのものを作れます。
テキストと色の構造さえ指定すればあとは自動的にサイトをつくるサービスも乱立しています。
このサービスではユーザーの反応に合わせて定期的にデザインを更新する機能もついています。
「かっこいいホームページがあるに越したことはないが、うちは中身で勝負なのでそこまで金はかけず、そこそこのものを作りたい」
という需要にぴったりと合います。
他にも
- 弁護士
- 会計士
- 医師
- 税理士
- 通訳
- 運転手
- イラストレーター
などが危険です。法律と過去の判例を覚えて判断する、過去の症状から病名を言い当てる、帳簿をつける、ただ早く言語を言い換える、くらいの仕事なら人工知能でも可能です。
東京オリンピックを意識して作られた東京のPRロゴだって、1億3000万円もかけて、「ダサい」と批判されて、パクリ疑惑が出るなど、デザイナーへの批判が強まっています。
それなら人口知能に10個くらいアイディアを出してもらい、ネット投票でもやった方がまだマシでしょう。
過去のデザインを学習しパクリ疑惑が出ないものを作る、という仕事では人工知能のほうが勝っています。
高級取りが真っ先に首を切られる例
企業が人員整理を行う際に真っ先に候補にあがるのは平社員ではなく、高級取りの管理職です。
2008年のリーマンショックの際に顕著によく見られた現象です。ニュースで見かける早期退職募集では多くの場合45歳以上の中年社員をターゲットとしています。
エクセル職人の大企業のシステムエンジニアが次々と首を切られましたね。
仕事で突出した成果を残せない高給取りよりは、成長が期待できる若手に残ってもらいたいのです。
スポーツの世界ならもっとシビアです。メジャーリーグの本塁打王が翌年に戦力外通告を食らうこともあります。(クリス・カーター選手)
巨人の村田修一選手も、まだまだやれる実力がありながら戦力外通告を受けて衝撃を与えました。
ある程度のスキルではなく、突出したスキルや人間力が求められる世の中です。
「人工知能が得意な仕事」と「人間が得意な仕事」の違い
人間にしかできない仕事をする、というのは正しい戦略と言えます。しかし、だからと言って
「人間にとって難しい仕事をしよう、手に職をつけよう」
と考え、安易に難関の資格や専門職を目指すのは危険です。
司法試験、公認会計士、税理士、医者は、突出したスキル、実績か取り柄がないと代替される可能性が高いでしょう。
モラベックのパラドックスとは
ここで注目したいのが、モラベックのパラドックスと言われる逆説です。
モラベックのパラドックスとは人工知能 (AI) やロボット工学の研究者らが発見したパラドックスで、伝統的な前提に反して、高度な推論よりも感覚運動スキルの方が多くの計算資源を要するというものである。
ここでいう感覚運動スキルとは、コミュニケーション、対人スキル、空間把握、顔の認識など、人類が数百万年かけて習得した技術のことです。
逆に高度な推論は、数学、科学、論理、ゲームなど、ここ数百年で必要になった技術です。
人間が数百年しか習っていない技術は人間には難しく見えるだけで、ロボットには簡単にできます。囲碁を人間が本気で研究したところで、人工知能には勝てませんでした。
反対に人間が数百万年かけ、無意識にやっていることはロボットには難しいということです。人間の長所や利点を意識しましょう。
目に見えないスキルを大切にしよう
何かスキルを身に着けようとするとき、特に日本人は何か目に見える成果を出したがります。その方がアピールもしやすいし、自信もつきます。資格をとったり、TOEICのスコアを残したり、プログラミングを学んだりします。
しかしそういった仕事は人間には難しくても、機械に簡単にできる可能性が高くなります。(モラベックのパラドックより)
もし何かスキルをつけたかったら目に見えないスキル、つまり人工知能に対策されにくいスキルを身につけましょう。例えば
- コミュニケーション能力が高い
- 人当りがいい
- リーダーシップがある
- 部下のやる気を引き出す力がある
などです。これらの能力は目に見えず客観的に評価しにくい部分があります。
「私にはリーダーシップがあります」とアピールしたところで本気で信じる人はいないでしょう。それでも生き残るには重要な長所となります。
これからの時代を生きる2つの戦略
人間にしかできないスキルを高める
私は決して「単純労働は置き換えられない」と言っているのではありません。人工知能が普及し導入費用が下がったり無料になれば、いずれ競争は激化するでしょう。
人工知能や機械の他にも外国人移民というライバルもいます。国外にアウトソーシングする選択肢も考えれます。
高給取りの知的労働者、専門職は真っ先に人工知能に取られる可能性が高い。単純労働者も長期的には人工知能やロボットに職を取られ、外国人との競争になる。
だからこそ同じ職種の人に勝つために、人間にしかできないスキルを高めていこうということです。
2つ目の道 人工知能を基盤に仕事をする
どうしてもコミュニケーションや対人能力が苦手だと言う人にはもう一つの道があります。いっそのこと人工知能のスペシャリストになるという対策法です。
人工知能をプログラムする、人工知能に新たな能力を加える、人工知能に関する相談に乗る、人工知能の導入の仕方、使い方をアドバイスする。これらのことは人間にしかできません。革命によって生まれる新たな職業についてしまうのです。
2000年ごろ、インターネットの可能性に気づいた人々は、情報革命でインターネットが普及した際に大儲けしました。
HP作成、WEBデザイン、SEO、WEBマーケティングという新たな職種が生まれ、Amazon、Googleをはじめとする何万ものサービスが生まれました。
人工知能が普及するとどんなサービスが生まれるか、具体的に想像もつきません。(簡単についたらあっというまに億万長者です) リスクはありますが、時代の流れを読み、新しいサービスを生む、追随するのも悪くありません。