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心理カウンセラーは資格なしでも誰でも名乗れる
不景気、リストラ、いじめ、ブラック企業、子供の貧困、こうした世の風潮の中で、心理カウンセラーの需要が高まっています。本物のカウンセラーに相談することで苦痛が軽減し、救われた人も大勢います。
しかし、需要が増えれば、それにつけこむ人が増えるのも世の常です。詐欺をたくらむ人は世の中の流れや流行に敏感です。大した資格や知識、技術のない人が心理カウンセラーや心理学者を自称する被害は後を絶ちません。
「心理カウンセラー」というのは資格でもなんでもありません。全くの素人でも資格なしでも心理カウンセラーを名乗ることができます。心理カウンセラーは「作家」や「デザイナー」と同じで何の力量の証明にもなりません。
エセカウンセラー、資格なしカウンセラーはなぜ生まれるのか
心理カウンセラーを自称する人が多いのは、ずばり儲かるからです。いや、「儲けようと思えば儲かる」という言い方のほうが正しいのかもしれません。
心理カウンセラーと言っても「臨床心理士」という難関資格を持っていない限りはなかなか厳しいのが現状です。専門家という意味では、弁護士や税理士、医者や看護師と同じですが、心理カウンセラーは「余裕があったら雇うし必須ではない」という認識です。そのため非常勤の雇用、求人が多く、安定しません。
ここで注目したいポイントが2つあります
- 臨床心理士はなるのがとても大変
- その割に臨床心理士のすごさが一般的に認知されていない
臨床心理は大学院で180時間以上の実習を積んだうえで、試験に合格しなければなれない難関資格です。なってからも論文を読んで勉強します。
しかしその辺の肩書は一般人にはよくわかりません。臨床心理士が難関だと知っていても、「メンタルケア心理士」「認定心理士」「認定カウンセラー」などの資格との違いを知っている人は多くないでしょう。資格なんだから全部一緒でしょ、なんていう人もいます。(難易度は資格ごとに大きく異なります)
相談に来る人が無知なのを利用し、簡単な資格を一個とっておいて肩書を作る、という手法は良く使われます。数日間講習を受ければ取れる資格なんかもありますし、すべては発行する協会しだいといったところです。中には自分で協会を立ち上げて自分に資格を与えるなんていう人も僅かながら存在します。
協会ビジネスについては以下の記事を参考にしてください
自称心理カウンセラーの3つのパターン
エセカウンセラーと言っても、善意で行っている人から、意図的に詐欺を行う人まで様々な人がいます。パターンに分けてみると以下のようになります。
- 自分の人生経験を生かし、困っている人を助けようとする善人。資格を何か一つくらい持っている。心理学の本を少し読んで自分はできると勘違いしているが、実力が伴わないパターンが多い。相談ごとに乗るのが好き。経歴に嘘はない。ココナラなどネット上で活動する人もいる。
- 退学やリストラなどつらい出来事を経て、心理カウンセラーなろうとした人。モットーは「自分のような苦しい経験をした人を救うこと」一度社会からドロップアウトした後に「師匠」なるものに出会い、心理学のイロハを教わる者も多い。話術が巧みで、経歴はやや盛られている。
- 心理学をお金儲けに利用しようと参入した人々。高額なセミナーを開いてマルチ商法を行ったり、怪しげな本、DVD、商品を売りつける人も少なくない。相談者からお金を借りて逃げたり、騙しとって逮捕される人もいる。大したカウンセリングもせず短時間で高額なお金を要求する。資格無し。
心理学の世界は外部の人間から見ればかなりわかりにくいルールやしきたりがある複雑な世界です。そこには様々な人が参入してきます。エセカウンセラーだからと言って必ずしも全員悪人とはかぎりません。上の1のタイプのように親切心から間違ったアドバイスをする人もいます。
タイプ別 エセカウンセラーの見抜き方
先ほど紹介した3つのパターン別に、エセカウンセラーの見抜き方を紹介していきます。
1 善良な素人カウンセラーを見抜くには
専門家ではないとわかっていてもついつい相談してしまうという人も多いでしょう。
まずは経歴をしっかりチェックしましょう。
- 臨床心理士の資格を持っているか
- 大学でどのようなことを学んだのか
- 価格が安すぎないか (都市部45~50分10,000±2,000円、地方なら7,000±2,000円が相場)
「比較的安いし、自分なんかが専門のすごい先生のところに行くのが怖い。資格無しでも構わない。」と思うのは大きな誤りです。人生経験でカウンセリングなんてできません。人生経験をやる気だけでカウンセリングができたら、世の中の中年は全員カウンセラーになれますね。
例え人生経験があっても昔ながらの精神論や古い常識、狭い世界でしか通用しないゆがんだ価値観を押し付けられるのが落ちです。
「専門知識に相応のお金を払わない」というのは日本人に特に多い悪い癖です。知識はタダで手に入るモノ、人に教えたところで減るものではないし安く教えるものという考えを無意識にしている人はこのタイプのエセカウンセラーに引っかかりやすいです。
2のタイプのエセカウンセラーを見抜くには
彼らは3つのタイプの中では一番心理学に精通しています。精通していると言ってもそれは体系的な話ではなく、断片的な心理学のテクニックを数多く知っているということです。
「一度泣かせてから、優しくすると相手をコントロールしやすい」
「相手の言ったことを繰り返すと相手は安心しやすい」
「少し遅らせて相手と同じしぐさを行うと親近感が湧きやすい」
といった心理学の本なら大抵書いてあるようなB級テクニックです。それに加え話術が巧みなので騙されてしまう人は騙されてしますでしょう。経歴は盛られていることが多いので、見抜くポイントになりません。
まずはあまりにも説教や中傷がひどく相談者が泣いてしまうようであればNGです。臨床心理士の資格あるなし関係なしにそんなところは辞めたほうが身のためです。治療と称して薬を提供して逮捕された人もいるというから驚きです。(医師法違反)
あとは、変に派手な格好をしていないか、時計が高級すぎないかをチェックしましょう。若くして大金を得た人が副業として行っているケースが多いためです。誤解を恐れずに言えば心理学をまともにやっていたらそこまで儲かりません。
自分も同じ境遇になったことがある、とやたらとアピールする人も要注意です。そういう人は他の相談者にも同じことを言っている可能性が高いです。
3 カウンセラーの皮をかぶった詐欺師を見抜くには
このタイプは冷静な人が見れば誰でも詐欺師だとわかります。この場合、騙す相手は必ずしも相談者だけではありません。「カウンセラー育成コース」を作ってカウンセラーになりたい人に講座を受けさせ、受講者は一定の結果を残せばセミナーや同じコースを開講できるというシステムです。カウンセラーがどんどん増殖されていくネズミ溝のシステムです。
国語力や論理が破綻している、グッズを買わせる、お金をだまし取る。こんなカウンセラーに合わないためには、1人で抱え込まないことが一番重要です。カウンセリングに行くことを恥ずかしいと思って誰にも言わなかった結果、詐欺にあってしまったという例が非常に多くあります。
カウンセリングを受けていることを家族や友人に話せば、万が一自分が洗脳されても周りの人が助けてくれます。
本当にいいカウンセラーとは何か
知り合いの臨床心理に聞いて、なるほどと思った話があります。
例えばあなたが恋人との人間関係に悩んでいるとしましょう。恋人とは5年以上も付き合い楽しい思い出もたくさんあります。しかしその恋人から突然暴力を奮われ、罵られ、精神的に辛い状況にあります。それでもときどき優しいときがあり、別れる決心がつきません。
第三者から見れば別れるのが正解でしょう。いつか結婚しても将来が不安です。しかし、本当にいいカウンセラーであれば「早く離れなさい」とは言いません。いいカウンセラーは恋人に悩まされる苦痛と、別れたくないという気持ちの葛藤、矛盾に注目します。言い換えればあなたの気持ちにぴったりより沿います。
客観的に正しい判断が必ずしも本人のためになるアドバイスとは限りません。その葛藤をともに分かち合い、そっと救い上げてくれるのがいいカウンセラーです。
客観的な意見を持ちつつも、相談者の心に寄り添うことは簡単ではありません。