目次
人工知能や社会の変化で医療はどう変わるのか
近年、不景気に伴い、安定した職業の代名詞と言われる医者を目指す人が増えています。大学入試の偏差値でも、ここ10年で医学部は大きく上昇しました。国公立はもちろん、昔は入りやすいといわれた私立大学の医学部も偏差値が上昇し簡単には入れなくなっています。
ところで、国際的にみて日本ほど医者の社会的地位が高い国は少数派です。例えばアメリカで勝ち組と言われる職業を上からランキング化したデータ(The best jobs in America)を見てみましょう。すると、医者に関連する職業は20位代に並んでいます。一位になった職業はシステム・エンジニアでした。10位以内には大学教授やコンサルタント、公認会計士などがランキングしています。ちなみにアメリカですごく儲かっているイメージの弁護士も18位にとどまっています。
古代ローマでは医者というのは、主にギリシャ人の奴隷がつく商業でした。
アメリカでも医者の社会的地位は高くないわけではありませんが、堂々と高いとは言い切れないレベルです。
日本でも、医者は儲からないとか、昔とは時代が違うとか、最近はそういう風潮も強くなってきたのは事実です。しかし、婚活パーティーや合コンで医者は相変わらず人気ですし、医学部の難化を考えると、少なくとも若者には医者というのは、社会的地位はもちろん、年収も高く、安定して見えるということは確かなようです。
それに伴い、大した志望動機や理由がないのに、医学部を志望する学生が増えているということを、都内の有名進学校の複数の教師から耳にします。
この話を聞いてすぐに頭に浮かんだのは、東京大学理科3類の針間貴己君です。彼は入学式で取材されたことをきっかけにテレビに出演し一躍有名になりました。彼は医者になりたいという気持ちは全くなく、医療ビジネスをおこして何千億円もの資産を築き上げ、そのお金を様々なビジネスに投資して社会貢献をしたいと公言しています。
その一方で、高校時代から遊び人として有名で、先日もtwitterで夜の街に繰り出して、女遊びをする様子を公開し、他の東大生をバカにするような発言を繰り返して、炎上し、垢消しに追い込まれました。大学の食堂でも音楽を大音量で流し歩き回っているというのも確かな筋からの情報です。
こんなモラルを持たない人でも勉強さえできれば入れるのが医学部なのです。
同時に、優秀で創造性あふれる人材が、理系の他の学部から医学部へ流れてしまうことも問題になっています。
若者に人気の医者という職業ですが、お金目当てでなって納得できるような職業なのでしょうか。現時点ではギリギリ割に合っているという感じでしょうか。
しかし、近い将来、必ず医者の社会的地位を脅かす事態が起きるでしょう。
特定看護師が医者の社会的地位を脅かす
一つの可能性はアメリカのようにナースプラクティショナー(NP)が導入されることです。NPは医者の代わりにある程度の診断や治療を行うことのできる、看護師と医者の中間に位置する立場にいます。
アメリカではここ15年で医者の平均収入が2割以上減ったといわれますが、その主な原因はNPの導入と言われています。日本でも特定看護師とよばれるほぼ同様の制度の導入が検討されています。様々な方面からの反対がありますが、10年以内に導入される可能性は十分にあるでしょう。それに伴い医療行為を行えるのが医者だけでなくなり、社会的地位が低下する、なんて可能性も十分に考えられます。
NPには到底できないような技術を持つ専門医は安泰でしょうが、そうでない普通の医者はいつ社会的地位が低下するかわかりません。
人工知能は医療を救う
もう一つの可能性は人工知能の進化です。近年人工知能が急速に進化していることは周知の事実です。2045年には人工知能の能力が人類を超えてしまうという予測も起きています。(2045年問題)
実際に医者では特定できなかった病名を、人工知能がたった10分で特定したという事例もあります。このとき活躍した人工知能があの「ワトソン」です。クイズ番組でクイズ王を破ったことで以前一躍有名になったあのワトソンです。ワトソンは2000万件以上の論文のデータをもとにたった10分で正しい答えを出せました。普通の医者なら一生かかってもこんな膨大な数の論文は読めません。
例え、医者の社会的地位が低くなっても医者がいなくなるわけではないでしょう。社会的地位や収入を気にせず、医者という職業に興味を持った若者が医者を志すようになればそれはそれでいいことです。医者が特別頭がよくなくても、人の頭を悩ますような問題は人工知能が解決してくれるでしょう。人工知能は決して我々の敵ではなく共存すべき仲間なのです。
それに伴い、優秀で創造性にあふれた人材が理系の他の分野に進学し、人工知能が苦手とするような創造性あふれる仕事をしてくれれば社会的にもプラスになるでしょう。これを読んでいる18歳以下のみなさん。大した志望動機もなく安易に医学部を志望するのはやめておきましょう。