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世界的ベストセラーとなった金持ち父さん
「金持ち父さん 貧乏父さん」といえば聞き覚えのある人は多いと思います。10年ほど前日本語訳が出版され、アマゾンのランキングで一位を何度も獲得したベストセラー本です。
「雇われのままでは、一生ラットレースからは抜け出せない」
「金のために働くな 金を自分のために働かせろ」
などのわかりやすいフレーズで、専門知識がない人にもわかりやいよう書かれています。この本に影響されて投資や起業を始めた人も多いようです。
用語解説:ラットレース
ラットレース(英語:rat race)とは、働いても、働いても、一向に資産が貯まらない状態のことである。
働いても、働いても、一向に資産が貯まらない様子が、回し車の中で、クルクル回っているネズミに似ていることから定義されている。
引用 wikipedia
金持ち父さんに対する批判
しかしネット上ではかなり強く叩かれているのも事実です。この手の本は必ずアンチと信者が一定数生まれまるので仕方のないことでもあります。
しかしこの本に対する批判の大部分は、本質をついていないと感じました。本の内容を正しく理解していなかったり、自分勝手に解釈して失敗した人が感情的になっているのです。
批判を大きく5つに分けると
- 金持ち父さんは実在しない嘘の話だから信用できない
- 本が古く手法が今の日本では通用しない
- 著者の会社がそもそも倒産している
- ネットワークビジネスを推奨している
- 一番儲かっているのは著者のロバート・キヨサキだ
となります。1つずつ見ていきましょう。
1金持ち父さんはもちろん実在しない
実在しないことは著者のロバートキヨサキ氏がインタビューで語っていたことです。モデルが誰なのか検証するサイトもいくつかありましたが、どこも明確な答えを出せていないので真実だと思っていいでしょう。
真実でないことを書く自己啓発書などたくさんあります。もしこの金持ち父さんシリーズが漫画で描かれていたらどうでしょうか。きっと誰もが作り話だとわかるはずです。
内容がわかりやすすぎて、普段自己啓発書を読まない層まで取り込んだために起きた批判だと考えられます。例え作り話であろうと大切なのは、書いてある内容です。
2 手法が今の日本では通用しないのか
この本の主人公の少年は金持ち父さんから様々なアドバイスを受けます。
- 会社を持て
- 印税収入などの権利収入を確保しろ
- 不動産はいいぞ
- 若いうちから投資をしろ
どれも本当に書かれている内容です。ここで大事なのは、これはあくまで金持ち父さんが言ったセリフに過ぎないことです。実際この本の著者はどれかを明確に勧めているわけではありません。儲からないと思ったら、とっとと撤退して次に行くべきとも書いています。
自分で儲かる市場を探す、自力で探せる力を付ける(ファイナンシャルインテリジェンスの一部)ことが著者の最も言いたいことです。今も儲かるのは株なのか、為替なのか、債券なのか、起業なのか、ビットコインなのかアフィリエイトなのか、そんなことは時代によって変わります。
なのにそれを都合よく解釈して、同じ手法を猿真似して損をする人が後を絶ちません。この本は文章自体は子供向けですが、全体を正しく読むのには高度な読解力が必要です。
大事なことなのでもう一度言います。全体を正しく読むのには高度な読解力が必要です。
3 著者の会社がと倒産したからどうなんだ
著者のキヨサキ氏が経営する会社が破産申請をしたことが日本でも大きなニュースになりました。それをみるやいなや大勢の人が「そら見たことか」と一斉にこの本を叩き出します。
しかし彼が何個も経営する事業のうちの一つが破綻したにすぎません。たくさん経営することがここではリスクヘッジになっているのです。
日本でもホリエモンが宇宙関係の事業への投資に失敗した話が報道されると、同じような批判的な内容がありました。これも本人にしてみればたくさんある投資先の一つにすぎません。現実に、ホリエモンは今も元気に活動を続けています。
4 ネットワークビジネスを奨励しているわけではない
本の中にネットワークビジネスやマルチ商法の話が出てきます。常識のある人ならそれなりの嫌悪感を示すに違いありません。しかし著者はネットワークビジネスを奨励してはいません。ただ、学ぶべきところはある、と言っているだけです。
三人行えば必ず我が師有り
こんな言葉をご存知でしょうか。これは孔子の言葉です。三人で何かをすると、必ずいい教師と反面教師を見出すことができる。つまり、どんな人からも教わることはあるという意味の言葉です。
その意味ではセールスをマルチ商法に学ぶのは、そこまで悪くない戦略です。逆に、マルチ商法の悪い点は徹底的に反面教師にすればいいだけです。
5 著者が儲かってはいけないのか
世界中で1千万部を超える大ヒットになれば当然作者の印税収入を羨む人も出てきます。たくさん売れる本を書いたら儲かるのは当然の原理です。違法な方法で稼ぐ詐欺師よりずっとましでしょう。
「コピーライティングのスキルを上げれば大金持ちになれますよ」ということを、本を売ることで実証してみせたとも取れます。大金を儲けたのは、それに値する価値を与えた証拠です。
金持ち父さんが役に立つのは頭のいい金持ちの大学生だけ
学ぶために働くのは大変なこと
金持ち父さんの本には大きく6つの格言が書いてあります。
- 金のために働くな
- お金の流れの読み方を学べ
- 自分のビジネスを持て
- 会社を興して節税せよ
- お金を作り出す
- 学ぶために働け
この中で一番難しいのはどれでしょうか。6番の「学ぶために働け」は一見簡単そうに見えますが、非常に難しい面があります。この本の主人公は、国際貿易を学び、船員となり、海兵隊でマネジメントを学び、ゼロックスでセールスを学びながらお金を貯めて最初の不動産を買いました。
同じことを日本でするのはとても大変です。大学に奨学金を借りて通い、少ない仕送りの中で必死にアルバイト。大したスキルもないまま、就活、そして就職。20代のうちは薄給で下積みを積み、気が付いたら30歳。もっと若いうちにスキルを身に着けておくべきだった。
というのが平均的な現実です。転職歴が多いとそれだけで敬遠されます。大学のうちに好きなことを学ぶのにもお金が必要です。
貧乏父さんは貧乏ではなかった
この本の最大の嘘は、本当は貧乏でもない父親を「貧乏父さん」と呼んでいることです。確かにお金には苦労しましたが、教育の世界ではかなり出世しました。子供の教育にお金をかけて、大学に行かせています。
もしも貧乏父さんが本当に貧乏だったら、主人公は大学に行けません。高校を卒業して働きます。今の日本には、家庭の事情で大学に行けない、大学でもバイト漬けなど様々な事情があります。
上のグラフは大学生の一カ月の仕送り額を示したものです。大きく減少していることがわかります。(一番下の目盛が95000円であることに注意)それに伴いブラックバイトに関する相談も増えています。
金持ちから見れば貧乏かもしれませんが、貧乏父さんもそれにりにいい生活をしています。
金持ち父さんは社会人や子どもには不向き
この本は子ども向けと言われています。確かに文章は読みやすいのですが、これだけの長い本全てを正しく理解するのは大変です。(この記事でこれを言うのは三回目です)
逆に社会人だとどうでしょうか。しっかりとした読解力と知識があればなんなく読めるはずです。しかし今更「学びながら働け」と言われても簡単ではありません。時間もないし、今更仕事も辞められない、頻繁に転職できない、というのが実情です。
となると一番読むべきは大学生です。
- 時間に余裕がある
- 読解力がそこそこある
- 行動力がある
という条件はつきます。この本を読んで、正しく理解して、行動に移し、学ぶ姿勢を忘れなければきっと結果はついてくることでしょう。
金持ち父さん 貧乏父さんの欠点
世界的ベストセラーとなりましたが、セールスを重視するあまりに失ったものもあると感じます。
- 具体性がない
- とにかく長い
- 情報が古い
この3つが主な欠点だと思います。普遍性を重視した結果、具体性を失い、わかりやすさを重視した結果長くなっています。
具体的でコンパクトにまとまっていないと、読むのが大変ですよね。そして新しい本なら尚良いです。今回は金持ち父さんと合わせて読みたいおすすめのビジネス本を2冊紹介します。
おすすめの本
ビジネス
自分が新しいビジネスを始めるときに非常に参考になった本です。金持ち父さんを読んでも行動には移せない、手取り足取り教えてほしい人向けです。どちらかといえば理系向きだと思います。
もう一つ、これも強く勧めるのは「億万長者のお金を生み出す26の行動原則」です。金持ち父さんよりも具体的で簡単にできる指針が欲しいという人におすすめです。数字が少なく、どちらかと言えば文系向きの本だと思います。
いずれの本も
- 具体的で
- コンパクトで
- 情報が新鮮
という条件を満たしています。あなたはどちらを選びますか?